山口大学技術経営研究科
山口大学

西日本MOTコンソーシアム

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 山口大学大学院技術経営研究科

MOT一口メモ 第212回  ― 宇宙ビジネスの成長 ―  先月,宇宙ビジネスにおいて二つの試みが成功し,話題を呼びました。リチャード・ブランソンが設立したヴァージン・ギャラクティック社による有人宇宙飛行(7月11日)と,ジェフ・ベゾスが設立したブルー・オリジン社による有人宇宙飛行(7月20日)です。どちらも創業者自身が参加するビッグイベントとなり,世界に中継されました。高度何キロメートルから宇宙なのか,という議論もありますが,多くの人々にとってはこれらは宇宙観光ビジネスの始まりとして認識されています。宇宙ビジネスは大きな広がりを持ったビジネス領域で,2019年時点で世界の市場規模は40兆円に達しています。衛星サービス,地上設備,非衛星サービスの3分野がそれぞれ3分の1ずつを占めています。ブランソンやベゾスの宇宙観光ビジネスは非衛星サービスの一角を占めます。ある予測では2040年代には宇宙 ビジネスは100兆円を超える規模になると言われています。宇宙ビジネスの市場規模の構成で注目すべき点は,衛星やロケットの製造に関する分野の占める割合がそれほど大きくないという点です。2019年時点の数字をみると,全体の40兆円に対して,衛星・ロケット製造分野は2兆円を占めるだけです。衛星やロケット無しには宇宙ビジネスは成立しませんが,それらから派生した技術やサービスの方が遥かに事業規模が大きく,また成長が見込まれています。   (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第211回  ― ミートショック,ウッドショック ―  先月,本欄で「外来語の氾濫」について書いたところですが,このところ外来語ならぬ謎のカタカナ語が登場しています。「ミートショック」や「ウッドショック」です。 ミートショックというのは米国産牛肉の価格高騰のことです。米国ではワクチン接種の進展に伴ってコロナ禍が収束しつつあります。外食産業が復活し,牛肉の需要が高まり,価格が高騰しています。日本の外食産業もそのあおりを受けているというわけです。 ウッドショックはミートショックより前から起こっている現象で,これもコロナ禍で停滞していた米国経済が息を吹き返したことに起因しています。米国では郊外の住宅建築ラッシュが起きており,これにともなって木材価格が上昇しています。米国の2021年5月の木材先物価格は2020年5月比で4倍となりました。 日本の建築分野は,輸入木材に頼っていますので,米国における木材価格上昇は日本国内の木材価格に直接影響を与えます。さらに世界的なコンテナ船の不足があり,木材の輸入自体,ままならない状況にあります。 日本が輸入に支えられた極めて脆弱な国であることを,あらためて思い知らされる話題です。   (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第210回  ― 外来語の氾濫について ―  社会経済のグローバル化(ここにすでに外来語が含まれているのですが)によるものでしょうか,世間一般になじまないまま,とくにビジネス分野において次から次へと外来語が現れています。例えば組織論では,サイロやティールという単語が人口に膾炙しています。 サービス技術の分野でよく聞かれるマルチモーダルという言葉について,わたしはよく理解していないのですが,インターフェースや認証の仕組みついてマルチモーダルという言葉が使われるときと,交通分野でマルチモーダルという言葉が使われるときとでは意味合いに違いがあるように感じます。同じ表記の言葉でも,文脈を無視して使っていると誤読・誤解が生じるかもしれません。外来語は新しさを感じさせ,人の心を捉える役割を担っているわけですが,濫用すると雰囲気だけで内容の無い対話に陥る可能性があります。   (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第209回  ― EdTech(エドテック) ―  人類の歴史が続く限り,教育が無くなることはありません。また,教育は子供だけが受けるものではなく,大人も必要に応じて受ける必要があります。ジグムント・バウマン『リキッド・ライフ』によれば,古代ギリシャでは教育という言葉には,そもそも生涯にわたって受けるものという意味合いがあったということなので,「生涯教育」という言葉自体は冗語であると言えるでしょう。科学技術が高度に発達し,社会経済のグローバル化も進展し,学ぶべきことが山のようにあります。従来の教育内容と教育手法だけでは,最低限必要なことすら学びきれない状況になりつつあります。効率的・効果的な教育を行うためにはEdTech(エドテック),つまり教育と技術を融合することによって,教育のあり方を変えていく必要があると思います。オンライン/オンデマンド教育はEdTechの入口に過ぎず,教育の効果を向上させるためには,さらなる技術やコンテンツや手法の開発が必要となります。ビジネス的な視点から見れば,EdTech分野は新興市場であり,規模・内容ともに大いなる期待を抱くことができます。   (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第208回  ― 基礎科学分野における中国のプレゼンス ―  世界最大の電波望遠鏡と言えば,長らくアレシボ天文台(1963年完成,口径305m)のことでしたが,2016年に中国貴州省で500メートル球面電波望遠鏡(FAST)が完成し,世界一の座は中国へと移りました。中国のこの巨大電波望遠鏡は「天眼」と呼ばれ,昨年(2020年)1月11日から正式に稼働し始めています。そして,今年(2021年)の3月31日より天眼は世界に向けて利用が開放されることとなりました。海外からプロジェクト申請を受け付け,審査を経て8月1日から観測時間が割り当る予定です。かつて世界一だったアレシボ天文台はといえば,昨年(2020年)8月10日から金属フレームを支えていたケーブルの断線が始まり,12月1日にほぼ完全に崩壊しました。天文学における数々の発見に貢献した天文台の歴史の終焉です。応用分野にとどまらず,基礎分野においても中国のプレゼンスが高まっていることを示すエピソードだと思います。日本の科学者・技術者は,中国との上手な付き合い方を常に考えなくてはならない時代になりました。   (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第207回  ― DXとRPA ―  デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現,つまりデジタル技術やデータサイエンスを活用し,社会経済を変革しようという声があちこちで聞かれるようになりました。 製造現場では自動化・マイクロエレクトロニクス革命(ME革命)・IT化と長年にわたる進化の歴史があるため,DXと言ってもそれらの延長上にある当然の取組として受け止めていることでしょう。 DXが大きな衝撃をもって受け止められているのは,製造現場のような資本集中型の部門よりもむしろ,総務・経理・営業等々の労働集約型の部門でしょう。ヒトの手,ヒトの頭脳に頼らなければならなかった業務こそ,DXによって生産性を向上するべく変革を迫られています。例えば,事務作業が真っ先に変革の対象として挙げられています。 事務作業におけるDXの第1段階としてはRPA(Robotic Process Automation)の摘要が挙げられます。つい最近マイクロソフト社が,手順が決まったPC上の作業を自動化するRPAツール「Microsoft Power Automate Desktop」をWindows 10ユーザー向けに提供することを発表しました。やる気さえあれば誰でもDXの最初の段階に踏みだせる状況になったわけです。読者各位はこれを聞いて食指が動きませんか?   (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第206回  ― 遠隔コミュニケーションリテラシー ―  人間には保守的・惰性的な面がある一方で,状況に応じて対応できる柔軟な面もあります。テレカンファレンス,テレワーク,オンライン授業等々,コロナ禍の中で遠隔コミュニケーションが一気に広がったのを見ると,そう思います。対面のコミュニケーションでなければ伝わらないものがあるのは確かだと思います。しかし,遠隔コミュニケーションを実践していくと,対面しなければ伝わらないと思っていたことが,かなり遠隔コミュニケーションでも伝えられることがわかってきます。伝えたいことを相手に伝達できないもどかしさは,遠隔コミュニケーションに慣れているか否かによるもので,遠隔コミュニケーションに関する知識やスキル次第でかなり解消されるのではないかと思います。これからの時代はデジタルネイティブと呼ばれる若い人々が担っていきます。彼らとのコミュニケーションの中心は遠隔コミュニケーションになるのかもしれません。現在の不自由な状況を,むしろ遠隔コミュニケーションリテラシーを磨く機会として捉えるのが良いと思います。   (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第205回  ― コロナ禍拡大 ―  2021年最初のメールマガジンとなりました。新型コロナウイルス感染症の話題は避けようかと思っていたのですが,感染拡大により一都三県に緊急事態宣言が発出されるなど,無視できない状態に陥っております。感染拡大の原因には様々なものが挙げられますが,小職が関係する分野で言えば,湿度低下と換気不足が挙げられます。冬は乾燥しがちですが,湿度が低下すると,飛沫が広がりやすくなるほか,のどの粘膜が荒れて感染しやすくなります。したがって,冬は室内の湿度管理が重要になります。相対湿度40%程度の確保が目安となっております。冬は室内の温度を保つため,窓を締め切ることが多く,換気不足となりがちです。良好な空気質を保つためには一人・一時間あたり30立方メートルの換気が必要です。しかし,実際にはそこまでの換気量が確保されていないことが多いため,こまめに窓を開けるほか,場合によっては,居室の滞在者の数を定員の4割から5割まで減らすことも必要になります。どなた様も,正しい知識に基づいて,感染防止に務めていただければ幸いに存じます。   (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第204回  ― 相次ぐ宇宙開発関連ニュース ―  先月来,宇宙開発関連の大きなニュースが相次いでいます。 〇11月15日,米スペースX社が「クルードラゴン」宇宙船(「レジリエンス」)を搭載した「ファルコン9」ロケットの打ち上げに成功。17日には国際宇宙ステーションとのドッキングに成功。 〇12月1日,中国の無人探査機「嫦娥(じょうが)5号」が月に着陸,3日には月面の岩石や土壌の採取に成功し,地球に戻るため月面を離陸。 〇12月6日,日本の探査機「はやぶさ2」のカプセルが地球に帰還。 この他,アマゾン創始者ジェフ・ベゾスが月面着陸に取り組んでいるという報道もあります。宇宙開発には覇権争いという面もありますが,ビジネス化という面が加わり,新たな段階に進んだようです。宇宙と言えば,弊大学も高精度の衛星データ利用を進めており,最近では小型人工衛星を開発するベンチャー企業アクセルスペースと協定を締結したところです。   (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第203回   11月上旬,某学会で開催される「東南アジア・中国におけるグリーン/スマートプロジェクトの現在」というシンポジウムで司会を務めました。現在アジア各地で,日本を凌ぐレベルと勢いでグリーンプロジェクト(建築物・都市・地域の低炭素化を目指すプロジェクト)やスマートプロジェクト(ICT(情報通信技術)を活用し,低炭素化を含む様々な社会的課題を同時解決するプロジェクト)が進展しています。細部,つまり空調機器や躯体の断熱性といった個々のハードウェアについては日本の家屋・事務所ビルの方がハイレベルであることが多いものの,ハードウェアをICTと組み合わせて運用していく仕組みづくりに関しては,アジア各地の方が柔軟で実践的でハイレベルであることが多くなっています。また,LEED認証など建築環境性能の評価を不動産価値に結び付け,有効に利用しようとするビジネスマネジメントの考え方に関してはむしろ東南アジアや中国の方が日本を凌いでいます。東南アジアおよび中国各地におけるグリーン/スマートプロジェクトの実例から日本の技術者や経営者たちが学ぶことは多いと思います。   (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第202回  ― 根強い技術革新信仰 ―  古い本を整理しているのですが,松岡正剛が子供向けに書いた『わたしが情報について語るなら』(2011年3月,ポプラ社)を読んで驚きました。「技術が新しくなることは『イノベーション』(技術革新)といって...」(同書390ページ)と書いてあり,子供向けであっても,知の巨人が「イノベーション=技術革新」という俗説を語っていたからです。多少であれ,技術経営に触れたことのある方であれば,「イノベーション≠技術革新」であることはご存知だと思います。この言葉はいわばリトマス試験紙で,その意味するところを尋ねてみるのは,相手のビジネス観を知る上で非常に役立つと思います。   (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第201回  ― 加速10年 ―  「コロナ禍によってビジネス環境は10年分変化した」と,ある経営者は言っています。エッセンシャルか不要不急かという観点で商品やサービスは取捨選択されるようになっています。また,もともと足腰が弱く,衰退傾向にあったビジネスは一掃されつつあります。その一方で,技術的にはかなり進んでいたものの,なかなか社会的に受け入れられていなかった,オンライン会議やテレワークが急速に普及しつつあります。とりあえず職場に行けば,それが働いていることになる,というこれまでの認識が払拭され,ジョブ型雇用の考え方が浸透し始めています。ICTは社会の需要に対応してさらに加速して研究開発が進み,新たなサービスやビジネスが生まれつつあります。10年後までに考えておけばよかったことをいますぐにでも実現しなくてはならない状況に私たちは直面しているわけです。  (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)

MOT一口メモ 第200回  ― 錯綜する情報 ―  新型コロナウイルス(COVID-19)はこれまでになかったタイプのウィルスであるため,今までの知識や経験の多くが頼りにならず,新しい情報だけが拠り所になっています。つまり現在の社会は,情報に踊らされやすい状況に陥っていると言えます。今年の6月に総務省が「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査」の結果を公表しました。これによれば,新型コロナウイルス感染症に関する,いわゆるフェイクニュースやデマを信じて拡散した経験のある人の割合(全世代)が35.5%であることが分かりました。世代別にみると,10代では45.5%,20代では41.1%であり,若い人ほど共有・拡散経験が多いという傾向が見られますが,40代でも33.4%,50代でも30.6%です。それなりの分別がありそうな世代でもフェイクニュースやデマの拡散経験は決して低くないというわけです。フェイクニュースやデマの共有・拡散も問題ですが,真実の情報であっても向き合い方を間違えると大変なことになるという報告もあります。ネット上で悲観的な情報ばかり読んでしまう,「ドゥーム・スクローリング」という行動が英語圏で問題になっています。「ドゥーム」とは破滅のことです。「ドゥーム・スクローリング」によってうつ状態や精神的な視野狭窄が引き起こされる可能性があると言われています。新型コロナウイルス感染症に関する情報をどのように取捨選択するのか,各個人の情報処理能力が問われています。  (山口大学大学院技術経営研究科 福代和宏)